今回は「家」の絵がメイン。
小さな家を描き集めて、「きおくのまち」を再現しよう、という目論見なのだ。
懐かしくて、どこかで見たような、そんな町並みを再現できたら、と、思う。
「きおくのまち」というタイトルは、大元は絵本のタイトルだった。
今年は「家」をテーマに描いてみようと思って、同タイトルで描き込んでいる絵本がある。
けれど、絵本だけでは飽き足らず、
この言葉の持つ世界全てを、空間で表したくなった。
今回の展示は、この絵本のお披露目も兼ねている、と言っていい。
そこに描かれた、滞った時間を切り取って、
今回の展示として、啓示できたらと思う。
このタイトルにあるように、
誰もが心の中に、そんな町を抱えている。
しかもその町は変容を続けていて、決して留まってはくれない。
現実にはもう、有り得ない光景だとしても、
それを「過去」とみなしてしまうには、あまりにも悲しすぎる。
だってそこは確かに、僕達が見て、生きてきた町並みなのだから。
無くなってしまったけれど、亡くなったとは認めたくない場所を、
誰もが持っているとするなら、
僕が描くこの町も、どこかで繋がっているのだと思う。
辿る道がなくとも、見た覚えがなくとも、
「懐かしい」と言えるような場所を、僕は再現してみたかった。
家が残っていなくとも、帰りたいと思う場所へ。
誰もが帰りたいと思う場所へ帰れる事を、僕は祈る。
この絵達に代えて、それを願うよ。